4、植物の生理        indexに戻る

 環 境

  光

 光形態形成

 植物は色々な色素をもつ、この色素が吸収するスペクトルにより、植物は成長し分化しあるいはそれらを制御する。例えば光のあたらない真っ暗な所へ、水草を植えておいたとする。そうすれば植物自体は白くなり、ひょろひょろともやしのように葉も育たない。これらのように光の影響を植物は大きく受ける。これらの形態形成変化を光形態形成という。

 この光形態形成を引き起こすエネルギーは光合成エネルギーと比べ極端に小さい。しかしこのエネルギーは発芽や開花にとって極めて重要である。その中で最も重要な波長は赤色光(660nm付近)と近赤色光(730nm付近)である。前者は発芽に有効であるが、後者は逆に発芽を阻害する。

 このように植物のもつ色素は選択的に波長を吸収しその波長により、植物の運命が決まるのだ。このような植物色素をフィトクローム(phytochrome)という。 このフィトクロームは種々の制御反応を行っている。たとえば、有茎植物の節間伸長、葉の形成や成長、苔類やシダ類の胞子発芽など様々な役割を果す。

 これらの反応は即効性の反応と、鈍行性の反応がある。また赤色光と近赤色光で可逆的に反応を制御する。いいかえれば、最後に当てられた光りによりその反応が決まるということである。

 これを我々のもつ水槽ではどのようにしていけば良いだろうか。まず、自然と同じような波長とその植物に見合うだけの光量を与えてやればよい。

 まず朝、日の出と同じような波長の光を当て徐々に色温度を高くし、5000Kから5500K位に高め、この時点で照度を最高にし、そののちまた、徐々に色温度を下げて行く。こうすれば自然が再現できる訳である。この全行程の演色度(平均演色評価数)はRa90以上にする必要がある。

 

 

 ここで光の知識について説明する。

色温度

 光源の光色には赤身を帯びたものや白いものなど色々ある。しかし、人がこれを見るときそれぞれの主観が入り、均一には評価されない。それを物理的、客観的に数字で表したものが色温度ということである。

 色温度はK(ケルビン)という単位で表される。色温度が低くなればなるほど赤身が強くなる。上記で述べた3000Kというのは、自然でいうならば日の出後45分、日の入り前45分と同じ光色をしている。そして5500Kというのは晴天の正午の太陽光と同じということだ。

 だいたい、色温度が3300K以下では赤身を帯び始め、5300K以上になると青みを帯びる。

 ここで誤解してもらってはいけないのは色温度が低いからといって赤いものが美しく見える訳ではない。

 色温度とは要するに光源の光色を表す尺度であって、色の見え方の良否とは別のものである。

 

 

 演色度

 光源の種類によって、対象物の色の見え具合がかわってくる。この色の見え具合がどうかを表す性質を演色性という。演色性のよい光源は色の見え方がよく、低いものは見え方が悪い。

 この演色性を決めるのは波長がどうであるかによってである(分光特性)。いいかえるなら、青い波長から赤い波長までの光エネルギーが、一様に含まれれば含まれるほど自然光に近くなり、演色性が高くなる。

 しかし、ランプ効率という点では、黄緑色系の光エネルギーが多いほど高くなる。従って、市販されている、いわゆる明るい蛍光灯は演色性に欠き、植物に取って良くはないのだ。また、ある程度の演色性を引き出すため3原色を組み合わせたものもあるが、植物のフィトクロームやクロロフィルには必要で無いものが多く含まれる。

 

 

 平均演色評価数

 光源の演色性の程度を評価する代表的な指数が平均演色評価数(Ra)である。これは中程度の鮮やかさで、明るさが等しい8色の試験色票の色ずれの平均値から算出される。

 これは、ある基準光で見た色彩に対し、それぞれの光源がどれだけその基準光に近いかを示した値である。その基準光と同じであればRa100ということになる。

 水草のように水の中に棲息する植物であれば、水中での散乱、吸収を加味し、Ra90以上で良く、95以上でとても良い。

 

 

 光束

 光源から放出される光の量を表す単位でルーメン(lm)で表される。 

 水槽ではある程度の光束は必要なものの、分光特性の方が大切である。

 

 

 照度

 単位面積当たりの光量(光束)。その場所の明るさを表す単位でルクス(Lx)で表される。

 同じ光束でも水深、濁度、植物の量、投入物等で値が変わってくる。

 

 

 分光光度

 光度は光の強さ(ある方向の単位立体角内に放射される光の量)のことでカンデラ(cd)で表される。分光光度は、ある一定の波長がどれだけの強さがあるかということで、水草水槽にとってはこれが大切。

 

 以上のことを加味しながら話を進めて行きたい。

 

 

 内生リズム

 昼間時、カモムバやミリオンフィラムは葉を一杯に広げ、光を少しでも多く受けようとする。しかし、ある程度の時間が経つか、照明を消灯すれば葉は閉じてしまう。これを就眠運動と呼ぶ。花も同じようなことが知られている。また、二酸化炭素の放出もこのようなリズムをもつ。このように、植物が、周期的に変化を行う現象を内生リズムという。しかし、これも光以外の温度などの環境にも左右される。

 この光や温度が一定である条件(恒常条件)では植物は生物の持つ、生理時計の働きによるもので、環境の周期変化から起こるものではない。

 植物を美しく健康に育てる上で、この内生リズムを我々人間が維持してやらなければならない。そのためある一定の時間で照明を点減してやる必要がある。また、太陽に近い波長を照射してやるべきである。

 内生リズムの特徴は

 外部環境を一定とした恒常条件下でもリズムは持続される。

 リズムの位相をずらすことが可能で、そのずれたリズムは恒常条件下で持続される。 リズムの保持にはエネルギーが必要なため嫌気条件下ではリズムの位相がずれる。

 リズムの長さは24時間周期とは限らない。

 輸送等、暗期にある程度長時間さらされていたとしても、単一の刺激(一回の明)を与えることにより、恒常条件下でも発現する。

 

 

 光周性

 自然の植物は日の出から日の入りまでの日長により、季節を知り、開花、結実する。水草も同じくそれを知ることにより、ある程度の周期を得て生活する方がより自然な形態となるのだ。我々がレイアウトに用いている植物の多くは熱帯から温帯に棲息しているものが多い。そのためそのそれそれの植物に焦点を合わし、日長を決めることは不可能である。従って水温の低くなる冬季を短日とし、夏季を長日とすればさしさわりはない。また、それぞれの植物により、どの程度の明るさまでを暗いと感じるかは違いがある。ある植物は10Lux以下を暗期とみなし、ある植物は200Luxでも暗期と見なす。日長に20分程度の差があれば多くの植物は敏感に反応する。

 以上のことから冬季と夏季の日長の差を1〜2時間付ければ良いようだ。

 

 

 水中での光の透過

 陸上の植物は、直接もしくは間接的に太陽光を利用している。そのため光に関しては問題はない。また、天然の水草もその水草に合った光条件、水質条件などそれぞれ条件の良いところで繁茂する。従って、我々のもつ水槽でもそれに近付けてやる必要がある。 しかし、人工的に我々が放つ光は太陽のような光束や照度もない。ましてや水中を透過する波長(分光特性)を考えると、相当光源をしっかり選ばなければならないだろう。 空中では光は波長の大きい(赤色の光)ものが透過しやすい。そのため、太陽から放たれる光が空中を長く通る朝日、夕日は赤く見えるのだ。また、日中のように比較的空中透過が短いときは、総ての可視波長が均一に地上へ透過され、白く、いわゆる昼白色に見えるのだ。

 では、水中はどうであろう。

 水中では、空中とは逆に波長の大きい(赤色の光)が透過しにくく、波長の小さい(青色の光)ものが透過しやすい。そのため、海の中へ潜ると青く見えるのである。

 ましてや、透明度の低い水中では光度は高くても、それそれの植物の感じる照度は低くなり、光合成に必要な赤色の光(655nmを最高とする600nm〜700nm)が非常に吸収しにくくなる。

 また以上のように光が水の中へ透過し、その段階で水面での反射、水中での散乱、吸収がおこり、そののち植物へ照射される。

 その割合は、水面の照度を100%としたとき、一般的な透明度の高い水槽で、水面下10cmで58%、20cmで49%、30cmで37%、40cmで30%となる。 その照射された光も総てが光合成などの生態維持に利用できる訳ではない。その光のなかで反射されるもの、熱になるもの、葉を透過するもの、吸収しても生態維持には関係の無い波長など、様々なものがあり、植物自身が利用できる光は数パーセントにしかすぎないのだ。そのため、最低限度の照度を得、波長(スペクトル)曲線を頭におき、分光特性を含めた光束と光度を決め、それに見合う照明器具を選べば、その水槽の最深深度での分光特性と、照度が決まる訳だ。

 

 光源

 さて、今まで述べたことを踏まえ、我々のもつ水草水槽ではどのような光源を利用すれば良いのだろうか。

 天然光のような強い光束や光度を得ることは不可能であり、また得たとしても無意味である。

 そのことから、最低限度の水生植物に必要な光を照射してやれば良い。

 ここで、植物に取って大切な光合成にはどのような波長が必要なのであろう。

 クロロフィルaは350nm〜450nm付近の青色光と600nm〜700nmの赤色光が最も吸収率が高い。従ってこの近辺の光を多く照射すれば良いのだ。しかし、青色の光は透過率が良いため、それほど量を多くせずとも良い訳である。また、多くなれば、藻類等の発生を招き見苦しくなる原因になりかねない。そのため、淡水生物飼育水槽では透過率の悪い赤色光を主体とする照明をするべきである。

 ただ、誤解してもらうと困るのは、赤い波長の光だけを当てるという意味ではない。自然のような色温度変化を持たし、天然光のような強い光量の比率にに近づけるよう赤色光を照射すると言うことである。1日を通じあまりにも赤色光の照射割合が多い場合、多少でも栄養過多に傾けば、通常よりも産毛状の黄金色藻類の発生頻度が高くなる。

 また、海水水槽では無脊椎動物等に補食されるプランクトンを育成するため、青色の強い光源を用いるのだ。

 

  

 

 蛍光ランプ

 さて、それでは赤い光を主体とする光源をどの程度照射すれば良いのだろうか。

 まず、光源を使用する水槽の水深、育成しようとする植物の種類などにより異なる。例えば、1200×450×450の水槽で有茎を主体とする場合。蛍光灯であれば、40W、演色系Ra90以上の球を4灯使用する。その内訳は、朝日と同じような、3000〜3500Kの球を2灯、4500Kの球を1灯、晴天昼光色の6000K付近の球を1灯を配し、その一つづつをタイマーにより制御し、日の出から日中、日の入りまでの光を再現するのである。そのときの光束は、パルックやメロウルクスに比べ50%ほど減少するが問題はない。むしろ、50%光束が減少しても、有用な波長を効率良く当てることにより、藻類の発生も制限され、植物も間延びせずに美しく育てることができる。

 現在、この業界の市場に出回っている植物育成、鑑賞魚用蛍光ランプというものがある。これも、光源の組み合わせを考え使用すれば有用にはなるものの、元来この球は魚を美しく見せる目的と、陸上植物の育成を目的とするものであって、光束も40Wで1000lm余りと、3波長系の同じ40Wの球と比べ1/3以下となる。

 また、3波長系のいわゆる明るい球の波長は、人間が見て最も強い(明るい)と感じる色覚反応を示す青色光(450nm付近)、緑色光(540nm付近)、赤色光(610nm付近)をバランスよく配し、光束を強め、色温度も特種な球を除き5000K〜7000Kと日中を思わせる昼白色としてあるのだ。

 さて、この球は水生植物育成にとってどう影響するのであろうか。この波長曲線を植物吸収波長曲線に重ねてみればよくわかる。まず、植物吸収スペクトルに殆どと言って関係ない青色光がかなり高いレベルにある。また赤色光も植物吸収スペクトルの最高655nmに対し、610nmとずれがあり、どちらかといえば良くはない。従って、人の目で見れば明るいが、植物に取ってはあまり好まない光といえよう。それだけではなく、青色光から黄色光を好むアルジ(藻類)が植物に利用されない多くの波長を利用し、はびこる恐れもでてくる訳だ。

 もう一つ、熱の問題がある。

 それは、蛍光灯安定器から放射される遠赤外線という輻射熱である。これは相当な熱量で、水温をかなり高くする。そのためこの安定器を蛍光灯と切り放して使う必要がある。オランダではこれを切り放し、ラインヒータ変わりに水槽の下へ設置したり、濾過層を保温するのにうまく利用している。我々日本人もこれを見習う必要がある。

 このような理由から日本ではオランダのように水草がうまく育たないのである。

 現在日本では、水草を育成するための有効な蛍光管は市販されていない。わたしは、これを早く市販できるよう開発を急いでいる。遠くない将来、あなたの手に届くであろう。

 

 

 水銀灯

 水銀灯を光源とする照明は、比較的ワット数当たりの光束が高く、深度の大きい水槽でもある程度の照度を保つことができる。また、反射板などを利用して光がある一定方向に向けて照射できることから水面上50〜60cmに設置することができ、赤外線等の輻射熱からの水温上昇も避けることができる。

 しかし、これも蛍光灯と同様、光源を選び間違えると良くない結果をもたらす。

 また、水銀灯の場合、演色度に問題がありどうしても水草本来の色合いが引き出しにくいということだ。このようなことから、高演色系のいわゆるデイルックスを使用し、それプラス水草の場合は赤い波長の強い蛍光灯を使用すれば問題は解決する。

 この場合も蛍光灯の照明と同様、点灯時に色温度3000K、Ra95以上の蛍光管をその水槽に見合うだけ点灯し、その後に水銀灯を照射すれば自然を再現できるはずである。

 しかし、蛍光灯と水銀灯を併用することはインテリア的にも難しいだろう。そこで、色温度が低く演色性に富むハロゲンランプを水面上1m以上の天井などに設置しタイマーで制御し水銀灯をカバーすれば良いだろう。

注意してもらいたいのは、海水水槽と水草水槽とは光源の種類が違うということである。

 

 

 電球、ハロゲン電球

 可視光線で言えばこれらのグループは、非常に優れている。しかしその反面、ランプ効率が非常に悪いのと、赤外線を多量に放射するため熱量の問題から言っても良くない。最近、ハロゲン球では、特殊な反射鏡を使って一度そこに光源からのエネルギーを反射させ、赤外線をある程度遮断する仕組みのものが販売されている。また、この反射板により、照射角が変わるのでスポットで使用するのか、全体を補うのかにより、選び間違わないようにする必要がある。

 これらを水面より隔て間接照明として使用するのは熱の問題をクリアーすればさしさわりはないが、メインの照明として使うことは避けたい。

 

 

 肥料

 水草は陸上の植物とは違い、根からだけではなく葉や茎からも水中に溶け込んでいる栄養分を吸収することができる。従って、極端に言えば根がなくとも成長、分化が可能であるということだ。

 また根というものも重要でないことはない。これは植物体をその場から移動しないため固定する役割と、嫌気的条件下でおおく存在する栄養塩を吸収するため泥中の嫌気的部分へ根を張り、2価鉄等の取り入れを行うのだ。このことから、底砂の嫌気的部分の存在が重要であることが伺えるであろう。

 

 

 無機イオン

 植物は有機物質と無機物質とから成り立っている。それを構成している大部分は光合成から得られる炭素(C)、水素(H)、酸素(O)である。これらCとOはCOとして吸収しHはHOとして葉や根から取り入れられる。

 植物体を構成する無機物質の量は水を除いても有機質が大半でほんの数パーセントにしか満たない。しかし、その中には植物にとって必要不可欠な元素が多く存在している。これらは、無機塩の形で水中や底砂に存在し、葉や根から吸収される。しかし、活発に代謝する水草が多く育成されている、バランスの取れたアクアリウムでは欠乏状態に陥りやすくなる。そのために、これらを随時補給してやる必要がでてくるのだ。

 この中で比較的要求の多いものを多量元素と呼びその中には窒素(N)、リン(P),イオウ(S)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)がある。また比較的必要量の少ないものを微量元素と呼び、その中には鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)ホウ素(B)、塩素(Cl)がある。

 これらのうち、その植物にとって1種類でも、ある一定量以下であれば何らかの障害が引き起こされることになる。(リービッヒの最小率の法則)

 

 さて、以上のような元素が欠乏するとどのような障害が起こるのであろうか。

 ある一定の環境を設定し、それに対しての肥料調整を行えば良い。(ここでいう一定の環境とは光源、二酸化炭素濃度、水質の条件を揃え、尚且つ底砂からの無機塩の溶出が無いものとする。)そして、最終的に葉の退色や成長量がどうであったかにより目安になるであろう。

 例えば、下葉が落ちるが新芽を吹き成長する場合、N,P,K,Mg等が水中や底砂に欠乏し、老葉中のそれらの養分が若葉へと移行するためである。

 また、S,Ca,Fe,Mn,B,Cu,Znなどの欠乏では老葉中の元素が体内を移行できないため、新芽の若葉から退色を始める。

 

 ここで簡単にそれぞれの元素の体内での役割と欠乏症にについて表であらわす。

 

元 素       体内での役割(構成成分)    欠乏症

炭素(C)     炭水化物、脂肪、蛋白質     成長停止

水素(H)          〃           〃

酸素(O)          〃           〃

窒素(N)     蛋白質、酵素、核酸       成長停止、黄変、落葉

リン(P)     蛋白質。脂質、核酸       いじけ

イオウ(S)    蛋白質、核酸          葉の黄変

カリウム(K)   イオン調節、蛋白質合成促進   分裂組織異常

カルシウム(Ca) イオン調節、細胞壁       細胞分裂異常、奇形葉

マグネシウム(Mg) クロロフィル、酵素の補助     光合成阻害、黄白化

鉄(Fe)     電子伝達物質(チトクローム)  呼吸阻害、黄白

モリブデン(Mg) 電子伝達物質、硫酸還元     呼吸阻害、窒素固定阻害 

ホウ素(B)    炭水化物の転流、細胞壁     組織壊死

銅(Cu)     電子伝達物質、酵素       水分吸収阻害

マンガン(Mg)  酵素              呼吸阻害、光合成阻害

亜鉛(Zn)    クロロフィル合成        光合成阻害

塩素(Cl)    クロロフィル活性        光合成阻害、いじけ

 

 その他の比較的重要な元素

 単子葉植物(サジタリア、バリスネリア等)ではケイ素(Si)を多く必要とする。 また、陸上植物ではアルミニウム(Al)も必要とされている種類があるが、これは酸性下でなければ溶出しないのではっきりしたことは分からない。

 

 塩分

 水草全般に塩化ナトリウム(NaCl)が少しでも存在するほか、イオン量が多く伝導度が高い場合、浸透圧等の調整機能に障害が現れ成長を阻害し、時には枯死する。またアナカリスのように塩化ナトリウムが存在しても、成長障害を引き起こさず育つような塩性植物も存在するが、このようなものについては塩分との関係ははっきりとはしていない。

 今現在の時点では水草を育成するためには塩化ナトリウムはあってはならないと考えてもらいたい。

 

 その他、栄養塩類の吸収の条件は、水温、pH、光、二酸化炭素濃度、酸素濃度に左右される。この条件が食い違えば、光合成や呼吸の障害を引き起こし、栄養塩吸収に必要なエネルギーが不足するのである。

 これらのことから色々な条件を兼ね備え、水草自信が健康に育っていれば、老廃物は総て水草の肥料となり、足らない分を定期的に補ってやればいつも美しい状態が保てるはずである。

 

 

 伝導度測定による肥料(栄養無機塩類)調整

 ある一定の水(水道水)をセットした水槽に入れ濾過をし、その伝導度を測定する。その結果80μSであったとする。そこへ水草を植え込み多少老廃物が蓄積されバクテリアにより分解され伝導率は100μSに上昇したとする。その後、ある程度の条件が揃っていればそれらの老廃物(イオン)は肥料として取り入れられ伝導率は98μSにさがる。そのときにある一定の肥料(腐植酸などの量を計算に入れたもの)を使用し伝導率を100μSに固定する。これが今現在私が進めている研究テーマのひとつである。

 この元の水(水道水)の伝導率も1年を通し変動がある。一番良いのは蒸留水からの調整が良いのだが、他の微量ビタミン、ミネラル分まで調整をしなければならなくなるのでこれも面倒である。従って、それらの変動は高ければイオン交換をある程度行い、低い場合はその他の水質項目を測定し、硬度が低ければそれを補うことである数値まで、上昇させることができよう。

 また、伝導率調整を行うときの条件は、水槽投入物からのイオン溶出があってはならない。そのため、底砂はできるだけ溶出物のないような、石英、アルミナを主体とするものを用いなければ、データーの取り用がなくなってしまう。

 厄介な点は、腐食質による伝導度の上昇である。バランスが取れていれば何等問題はなく、1カ月に1度ぐらい、これによる老廃物を換水と共に低下させれば良い。しかし、藻類が少しでも発生する水槽では日々の伝導度に大きな変動を引き起こし非常に調整が難しくなる。

 また、この調整に使用する肥料も問題となる。

 一番良いのはその水質を測りそれにあった肥料を選べれば良いのだがそうはいかない。しかし、日本の水道水の水質は大きな開きはそうないようであるし、またあったとしても少しのイオン交換やその他の簡単な処置で、その肥料の効能を発揮できるであろう。そのような肥料ももう遠くない将来できるであろう。

 このようなことが完全に行えるようになれば肥料濃度、換水時期などが、生物化学的に知ることができ、もっと簡単に水草を美しく、強く育てることが可能になるだろう。

 

 

栄養

 光合成

 水性植物は陸上の植物とは違い、植物体が空中にさらされているのではなく、水中で成育する。そのため、二酸化炭素は水中に溶け込んでいるものを葉から吸収し、養分や水も陸上の植物とは違い、葉から吸収することができる。

 その吸収した二酸化炭素と水は、葉肉細胞に含まれる葉緑体に送られ、クロロフィルが捕えた光エネルギーを利用し、糖やデンプン等の炭水化物へと同化される。これが光合成(炭酸同化)である。

 この反応は陸上の植物を含め、地球上では最も重要な反応である。なぜなら、我々動物が生きるうえで必要な有機物を光エネルギーを利用し、無機物から合成してくれるからである。

 このようにして合成された有機物と、葉や根から吸収された栄養塩を原料とし、蛋白質や核酸、脂質、貯蔵物質等が生成するのである。

 それらを草食動物が食し、それを肉食動物が補食し生態系が成り立ち、我々人間も生きることができているのである。また、植物は光合成により水(HO)を還元し、結果として副産物である酸素(O)を放出する。これにより、まだ地球上の大気に酸素がなかったころ、水中で植物は酸素を放出し紫外線によりオゾンが生成された。そのオゾンが紫外線を吸収し、地表は生物にとって有害な強い紫外線にさらされることがなくなり、水中の生物は陸上へ進出する結果となり、今日の我々を含めた生物の繁栄をもたらす結果となった。

 

 

 葉

 葉は光エネルギーを受け、二酸化炭素や水を取り入れ同化を行い、それを植物体の隅々まで師管を通じて移動させる。

 これらのうち、光を受けるのが葉肉細胞中のさく状組織や海綿状組織に点在する葉緑体であり、二酸化炭素や水を取り入れるのが葉裏面に多く点在する気孔である。また表皮細胞の外側は、クチクラ層(ろうのような皮膜)で覆われ、養分や水の放出や侵入は防がれ、気孔を通じて調整される。

 葉肉の太陽光の当たる上面側にはさく状組織が1層若しくは2層、規則正しく配列され、その下は下表皮まで海綿状組織が不規則に、一定の空間を持って配列している。この空間は葉の中全体でつながっており、これが気孔につながり水がこの空間には入り込む。気孔から入った水の中の二酸化炭素や養分は、速やかに各細胞へと拡散する。つまり、この空間は水中との物質交換に非常に都合の良いようにできている。

 気孔はこれらの二酸化炭素や、養分の調整に役立っている。一般的に光の当たっている日中は、光合成を行うため二酸化炭素や養分が必要なため気孔を開き、夜間は閉じる。

 

気孔は様々な快適要員により、開閉する。そしてその反応は数分間で行われる。

 また、光が強く照射されていても、水温やその他と条件が変わったとき、気孔は閉じるという現象が起きることがある。

 

 二酸化炭素濃度の勾配

 二酸化炭素は気孔を通り、葉緑体へ取り込まれる。この働きは、葉緑体で二酸化炭素を利用し、炭酸同化を行うため、植物体内では二酸化炭素濃度は低くなる。従って水中に二酸化炭素が多く溶け込んでいるなら、それは濃度の低いところへ移行しようとする。そのため、二酸化炭素は気孔めがけて入り込み、それがまたより濃度の低い葉緑体めがけて拡散していく訳だ。

 

 陽葉と陰葉

 自然界での森林などでは、その群落の頂上では十分に光があるものの、その下層に成育する植物には数パーセントの光しか供給されない。これと同じように、水中に育成する植物も、日のよく当たるところに育成しているものと、当たりの悪いところに育成しているものがある。

 日当たりの良いところに育成している植物を陽性植物といい、水草では、ハイグロフィラやパコバなどの有茎植物と呼ばれるものの多くがあり、陰性植物には、アヌビアス、シダ、コケ類などがある。

 陽葉と陰葉では葉の構造に多少の違いが見られる。陰葉は陽葉にくらべさく状組織がよく発達し、葉が厚い。また光の多少により葉緑体の構造にも大きな影響を与える。水草の中でも陰葉と呼ばれるものは、陽葉に比べ緑色が深く見える。これは、葉緑体中の緑に見えるグラナと呼ばれる層が多くなっているためである。このようにして陰葉は少ない光をより効果的に取り入れ適応していると言えよう。

 

 葉緑体

 光を受け、二酸化炭素を捕へ、様々な酵素を使いそれらを炭水化物にまで合成する光合成工場がこの葉緑体である。ここで光合成により作られた有機化合物は運び出され、また必要な物質は、細胞質から吸収される。

 この葉緑体の大きさは、高等植物では直径約5μm、厚さ約2μmの碁石のような形をしており、表面は葉緑体膜と呼ばれる二重膜で覆われている。そしてその内部の構造は、高度に組織化されたものである。葉緑体内部には長軸方向に何層も偏平な袋状のチラコイド層と呼ばれるものが走っており、それ以外の部分はストロマと呼ばれる部分である。そのチラコイドが短くコインを重ねたように見えるところがグラナスタックと呼ばれ、そのコイン1枚に相当する所がグラナと呼ばれる部分である。

 クロロフィルを始め、光合成に関与する色素の総ては、チラコイド部分に存在し、グラナの色素部分で明反応が行われる。

 このグラナが光りエネルギーの補足に重要な役割を果しているのだ。

 もう一つのチラコイド部分であるストロマは親水性蛋白質を主成分とした基質で、炭酸ガスを固定するのに欠かせない酵素を含み、ここで暗反応が行われる。

 

 色素

 光合成を行う植物は総てクロロフィルaをもっている。これは、光合成を行う上で必要不可欠なものといえよう。また、この色素に対し補助色素というものをもつ。例えば高等植物であればクロロフィルbをもち、褐藻や珪藻であればクロロフィルc、紅藻であればクロロフィルdを含んでいる。その他光合成に関与しない補助色素にカロチノイド類、フィコビリン類がある。これらは、赤い色や黄色い色をし我々の目を楽しませてくれるのだ。また、総ての葉が赤く見える種類の草でも緑色をしている草と同じように葉緑体が多く存在し、同じように光合成を行っている。

 

 光合成を支配する条件

 光合成は光の強さ、二酸化炭素濃度、水温、水質などの様々な条件により制限される。

光;ある程度の強さまでは光合成速度は早くなるがそれを越えると、一定速度になる。また、人工的な光源を使用したばあい、波長により、制限要因となるものもあるので、強すぎる光りは禁物である。

 

二酸化炭素濃度;水生植物の場合、24℃で35ppm程度が最良である。これより少ない場合はやはり制限される。多くてもそう別条はないが二酸化炭素のロスにつながる。

水温;強い光の元では約30℃で光合成速度は最高に達し、それより高くなれば減少する。弱い光の元では25℃最高に達するが、強い光の場合と比較すると1/10に減少する。このことから、水温が高くなれば強い光と、より多くの二酸化炭素や肥料を必要となる。高温の場合成長速度は速くはなるが水生植物では形態は悪くなる。

水質(栄養塩濃度);少ない場合は阻害され、多い場合は藻類の発生などにつながる。その他が良い条件として、調整の取れた肥料を使ったなら200〜300μS程度が良い。

  これらの条件が揃ってこそうまく光合成が行われる。また、この中で条件の悪いもの(最も不足しているもの)により光合成量が決まる。 

 

 

 光合成

 水草が無機物である二酸化炭素(CO)と水(HO)から糖(ブドウ糖などの炭水化物)を作るときの反応を、炭酸同化という。炭酸同化には使うエネルギー源により、光合成と化学合成に分けられるが、今回の水草水槽において重要となるのは、前者の光合成のほうである。

 炭酸同化は水草の葉裏面に分布している気孔を通じ、COとHOを取り込み葉肉細胞の葉緑体に送り込まれる。それをクロロフィルが捕えた光りエネルギーを利用し、葉緑体内で炭水化物が合成される訳だ。

 これは、大きく分けて光が当たっているグラナ部分で行われる明反応とそうでないストロマ部分で行われる暗反応とがある。

 明反応はクロロフィルaと補助色素が光りエネルギーを受け、それを化学エネルギー(ATPとNADPH)に転換する働きをもっている。その化学エネルギーを利用して、暗反応ではCOを取り入れ糖(炭水化物)に同化される。前者を電子伝達系(チトクローム)といい、後者をカルビン回路という。

 

 窒素固定

 水草を含めた植物は必要な蛋白質などの有機物は何であれ自分自身で作らなければならない。蛋白質の原料となる窒素は硝酸塩(NO3-)やアンモニウム(NH)として、イオウは硫酸塩(SO2-)として、リンはリン酸塩(PO3-)として、水中や底砂から取り入れる。

 窒素は水中や空気中に非常に多く含まれているが、これは水草には利用できないのである(窒素は水中ではエサ、魚の死骸や枯葉などの蛋白質が底砂若しくは濾過層でバクテリアにより分解され、アンモニウムや硝酸となる)。

 窒素固定の反応は、先程の暗反応でできたグリセリン酸リン酸(PGA)という物質から、カルビン回路(呼吸)により、グルタミン酸というアミノ酸が生成される(アミノ酸新生)。このアミノ酸から各種のアミノ酸が合成しなおされるのだ。

 

 代謝

 水草を含めた植物はエネルギーを光合成により得、自分自身で無機物を有機物に変える能力をもっている。我々人間を始め動物はそのような能力をもたず、有機物を食している。たどっていけば有機物の源は植物にあるということだ。

 植物は自ら作り出した物質を、自分の生命維持のために使う。そのため光りエネルギーが必要となる。物質の分解に伴いエネルギーが放出され、そのエネルギーによりまた外の物質が作られ変化し、またエネルギーが交代される。このエネルギーで生命を維持しているのだ。この交代が止まったとき、植物(生物)は死に至る。このような物質の循環を代謝という。

 代謝には二手あり、呼吸のように糖(高分子化合物)を分解し、COとHO(低分子物質)を作りエネルギーを得る異化作用と、光合成のように他のエネルギーを利用し、COとHOから糖などを作る同化作用とがある。前者を発エネルギー反応、後者を吸エネルギー反応という。

 また、植物も動物も行うような代謝(呼吸や有機物の分解合成)を一次代謝といい、それに対して植物がもつ特有の物質分解や合成(カーナミンのハーブの成分、チドメの薬用成分)することを二次代謝という。

 

 

 成長の種類

 ある草は伸びるのが早くすぐに水面へ達し、ある草はランナーで見る見るうちに増えていく。このように新芽を吹いたり、子孫を残したりすることを成長と呼ぶ。

 主に新芽を吹いたり、色々な器官ができていく(分化)のは細胞数が増えることによっておこる。すなわち、DNA(遺伝子)の合成と細胞(核と細胞質)の分裂を繰り返している。これは根や茎の先端部の生長点で活発におきる。この中でDNAの合成時期をS期、細胞分裂の時期をM期と呼び、その間の時期をG1期と呼ぶ(S期は合成、M期は有糸分裂)。

 植物は動物とは違い細胞分裂だけで成長している訳ではない。G1期には細胞分裂に関係なく成長分化を始める。これは細胞が大きくなることで植物が大きくなっていくのだ。具体的にはハイグロなどの水草が数日で水面へ達する。これは茎を構成している細胞が縦方向に伸び、全体的に縦方向に長くなるという成長である。このときに節間があくことが多い(伸長成長)。葉の場合は膨れるように成長する場合もある(肥大成長)。 このように外からの水の吸水による成長を吸水成長という。

 

 

休眠

 水草を購入して植えておいたがすぐ枯れた。しかし、忘れたころに芽を吹き、盛んに成長したというケースがよくある。この期間を休眠といい、条件が揃わなければ死に至る場合もある。

 これは、イモ類(ニムファ、アポノゲトン)やクリプト類などによく見られる。イモ類の場合、水質が悪くなったり、栄養塩の量が少なくなると休眠状態に入りやすくなる。また、ある程度の環境に戻ると葉を出し成長を始める。クリプト類については水質の違いから休眠に入り、自分自身が新しい環境に適応できたときに発芽する。

 これらは、光や水温により左右されホルモンにより調整される。

 有茎の水草で購入したときはよく育ったが、1週間ほどすると枯れたという場合がある。このときは休眠でなく、生きるために子孫を残そうとする生殖成長といい、条件が合わないときに起こる。

 

 ホルモン

 水草を水面に浮かしておくと芽は上を向き、根は下を向く(屈地性)。また水槽の横から光をあてると、水草の先端はみな光源のほうを向く(屈光性)。これらはオーキシンという植物ホルモンにより調整されている。

 水草(植物)は移動できないので、環境変化に適応していかなくてはならない。このため水草は環境(水質や光り)が変わったときはそれに適応し、光が当たらなければ当たる方向へ向き光を吸収しなければならない。

 このような運動を調整するのがホルモンであり、その他浸透圧(水や栄養塩の出入り)、呼吸、細胞分裂、開花などもそうである。

 植物ホルモンは1種類で様々な役割を調整する。これは動物のホルモンとの大きな違いである(植物ホルモンのオーキシンでは、浸透圧、呼吸、細胞分裂の調整など何種類でもするが動物ホルモンのインシュリンであれば糖の調整しかしない)。

 

 以上のように水草は動物と違った生活と代謝をし、陸上の植物と違った所も数多くある。水草と陸上の植物との違いをまとめてみると、まず根は水や栄養分を吸収する役割よりも、水に流されないよう植物体を固定することを目的とし、蒸散は行わず葉から水分や栄養分を取り入れている。また、回りが水のため、比較的茎部がデリケートである(機械組織、表皮が発達していない)。抽水性の水草は両方の性質を兼ね備え、水中と陸上(水上)で形態が変化するのは適応のせいである。